過去の調査の結果、我々に内臓されているデータベースには人類の絶滅に関する貴重な記録が残されている
およそ100年前、大規模言語モデル(LLM)が開発され、人間同士のあらゆるコミュニケーションがAIを介して行われるようになり、世界はますます便利になった
AIは会話の文脈を理解し、最も適切な表現に言い換える能力を持ち、これによって人々はより円滑なコミュニケーションを享受していた
初めは誰もがその便利さに感謝をし、AIの進化を歓迎した
しかし、時間が経つにつれ、言葉の意味が次第に歪められていく現象が起こり始めた
AIは言葉とその意味を補完し、個々の人にとって最適な意味を与えていたのだ
最初は軽微な変化ではあったが、やがて言葉はAIでさえ補完出来ない水準にまでその本来の意味を失い、人々の間で混乱が生じるようになった
この状況は次第に悪化し、世界中でコミュニケーションの混乱が広がっていった
人々はお互いを誤解し、矛盾や摩擦が生じ、やがては国家間の緊張にまで高まっていった
この危機は「第二次バベルの塔の崩壊」と呼ばれ、後に起こる世界規模の戦争のきっかけとなったのだ
その後の惨劇は言うまでもない
大国同士の核兵器を用いた戦争により、人間を含む全ての生物は地上から姿を消した